九鬼周造随筆集

九鬼周造随筆集(岩波文庫)の中にある「祇園の枝垂桜」が良い。

枝垂桜を美の神と称して、その美の神のまわりのものはすべてが美で、すべてが善だという。酔漢が一升徳利を抱えて暴れているのもいい、路端で立小便をしている男も見逃してやりたい、この桜の前なら悪くないという。

むしろ逆だと思っていた。それこそなんて野暮なことをするんだと、美を汚すなと、もっと厳しいというか堅苦しい人を想像していた。

すべてを許してしまう美か。美はすべてを包摂してしまうのかな。