オイディプス王・アンティゴネ(福田恆存訳)、ギリシャ悲劇は初めて読んだけどあっという間に読んでしまった。思っていた以上に読みやすくて面白い。ただ面白いだけではなく、自分にどう生きたいのかを問うてくる。これが文学の力か。
生まれる前から呪われた運命を背負わされているオイディプス王だけど、ああなっても、それでも自殺しないんだな。オイディプスには敬意を覚えるし、月並みな言葉だけど生きる勇気も湧いてくる。
ラストに「誰にせよ、最後の日を迎えるまでは幸福な男と呼んではならぬ」とあるけど、「不幸と呼んではならぬ」とも言える。
オイディプスのように呪われたとしか言いようのない人生でも、自ら終わらせずに生き切った時、呪われた運命に屈しなかった時、彼の人生を不幸と片付けることはできない。「シーシュポスは幸福なのだと想わねばならぬ」とあるように。
アンティゴネのような勇敢さを持ちたい。
ある先生が「文学とは人生、価値観を変える力を持つもの」と、そして別のある先生は「真実とは時に非常に厳しいものだが、一度真実に楔を打ち込まれた者は真実を無視することはできない」と言っていたけど、そういう力がある。